「”不調”の真相」EPL第31節(延期分)マンチェスターユナイテッドvsマンチェスターシティ
「”不調”の真相」
EPL第31節マンチェスターユナイテッドvsマンチェスターシティ
今節は延期されていたプレミアリーグ第31節マンチェスターダービー。
エヴァートン戦で終始低調なパフォーマンスを見せたユナイテッドだが、
個人的には今日の選手のパフォーマンスには満足している。
それでも届かなかった原因は一体なんだったのだろうか。今回も自分なりに分析した。
ユナイテッドの狙いは布陣を見れば分かるとは思うが、最後尾は5バックで全てのレーンのスペースを消す形。
しかし最終ラインに5枚を充てる分、中盤は3枚でカバーしなければいけないので、横に揺さぶると中盤にはすぐにスペースが生まれる。
シティは532の相手には必ずそこを利用してくるので、ユナイテッドの中盤3人には運動量でのカバーが求められる。
シティのビルドアップ時にはユナイテッドは2トップ+IHのポグバとペレイラがスライドすることでシティの3バックを見るという形でのプレス。
ただスライドする瞬間に必ず微妙なズレからフリーになる選手が生まれるので、シティの狙うべきところ・ユナイテッドのケアすべきところはそこになる。
前半シティはプレス網をくぐり抜けるのに苦しんだ。
またスタジアムの雰囲気の影響かシティは立ち上がりから技術的なボールロスト等が多く、ユナイテッドは幾度かカウンターのチャンスを得る。
しかしシティのネガティブトランジションの早さやユナイテッドの攻撃陣の微妙なズレから決定機な枠内シュートはなかった。
前半終盤にはシティが押し込んだ中で決定的なシーンを作り出したが、守備陣の集中力とデヘアの好セーブもあり前半はスコアレスで終える。
後半、立ち上がりから同じようにユナイテッドは前から守備をする。
シティを押し込んで守備をさせる時間も作り、決定機とも言えるフィニッシュをポグバが放つがフェルナンジーニョの素晴らしいブロックによって防がれる。
ここで足を痛めたフェルナンジーニョが交代。代わるのはサネ。
サネが左ウィングに入り、スターリングが右ウィングに、ベルナルドが右IHへ下がり、ギュンドアンもアンカーへ一列下がる形。
当然シティの守備力は下がるのだろうが、ユナイテッドを応援する身からすれば非常に嫌な交代だ。
守備力を下げるリスク以上に攻撃力へのリターンが大きいように思えてしまうからだ。
結果的にこの変化がシティの攻撃の歯車を嚙み合わせる形となる。
シティが押し込む時間の中52分、ウォーカーにスライドしたポグバが中盤に門を開ける。
そしてギュンドアンがボールを持つと最終ラインのショウ・リンデロフ間に斜めの走り込みをしたスターリングにショウが釣られ、右端のレーンに大きなスペースが生まれる。
そしてそのスペースに走り込んだのはベルナルドシルバ。
ギュンドアンはこの門を通す。
ポグバはカバーには行けず、釣られてやや遅れる形となったショウとベルナルドの1対1。
カットインからの素早い振りはデ・ヘアのニアを抜く。0-1。
2失点目はカウンター。
フレッジの鋭い縦パスはポグバには通らず、コンパニからスターリングへ。
ボールホルダーのスターリングに対して縦を出したフレッジがやや遅れる形になり、
代わってアンカーのポジションにいたリンガードはスピードに乗ったスターリングに対峙すら出来ずに置いて行かれる。
ここはファール気味にでも潰しに行かないといけない。
左サイドヤングが遅れたので、数的不利を強いられる。
残ったのはスターリングの前をケアするリンデロフ・スモーリング・ダルミアン。
アグエロに2枚のCBが釣られたためフリーのサネがボールを受け、
しっかりとコントロールして放った重い一撃はデ・ヘアの膝に当たりニアを抜いた。
0-2。
ボールを奪いに行かなければならないユナイテッドだが、2得点をしチャレンジをする必要のないシティからボールを奪うのは難しかった。
ルカク・サンチェス・マルシャルを投入し攻撃は活性化するも決定的なところでは必ずシティの守備の粘り強さに阻まれる。
そしてそのまま0-2で試合終了。
⚫失点シーンについて
1点目はシティを賞賛すべきだろう。
5バックで埋めたはずのレーンをスターリングの効果的な動きで空け、そこを見逃さず連動したベルナルドとギュンドアン。そしてベルナルドのシュートまでのクオリティ。
5-3-2を組織的に崩した上で個が発揮される形だ。
ポグバがその空いたスペースに気付いてカバーに行ければ間に合ったかもしれないが、崩されたのは5-3-2という組織。
シティのSBが張り出せば中盤3枚に穴が空くのは5-3-2のシステム上必然であり個人を責めるべきではない。
むしろこれをチーム全体で狙いとして共有し、実行まで繋げることのできるシティの完成度の高さを称賛すべきだ。
2失点目はシティとの走力の差が際立つことになった。
また守備の連携も気になるところだ。
ダルミアンがアグエロの後ろをケアしていたので、状況を正しく整理出来ていれば、スモーリングは左のカバーにいけて人数不利でも対応出来た可能性は高い。
ただ今日は失点シーンよりも得点出来なかったところに目を向けるべきかもしれない。
⚫気持ち云々ではない!
ーバルセロナ戦1stLegからのここ5試合で無得点ー
(PK除いて)無得点という数字から顕著に浮かび上がるのは、カップ戦の影響でミッドウィーク開催続きによって引き起こされた選手達の著しいパフォーマンスの低下だ。
CLホームバルセロナ戦
→70時間後PLホームウェストハム戦
→72時間後CLアウェーバルセロナ戦
→90時間後PLアウェーエヴァートン戦
→78時間後PLマンチェスターシティ戦(15日間で5試合)
ポゼッションを好まずロングボールを多用するサッカーをすれば、特に前線で体を張る攻撃陣は1試合毎の消耗も激しいはずだ。
エヴァートン戦はこの影響で文字通り終始低調なパフォーマンスであったが、
それに比べれば今日の試合はよくやった方だ。
ポグバ等個人を指摘する声は多いが、ポグバはこの過密日程の中全試合でフル出場している。
期待する気持ちも分かるが、ポグバの降り以外繋ぐ手段に乏しいユナイテッドにおいて彼を批判するのはいささか酷では無いだろうか。
リーグ戦・CLと1つも落とせない試合ではあるが、私としてはポグバやルカク・ラッシュフォード等攻撃陣のターンオーバーをこの過密日程の中ほとんどしないスールシャールの采配に疑問符を打ちたいところだ。
特に僅かな出場で存在感を発揮するサンチェスをスターティングで使わないのには理由があるのか。このまま契約を終えるのでは高い給与が勿体ないではないか。
ユナイテッド 今後の日程
シティ戦には勿論勝利してほしかったが、個人的にはダービーは最悪落とした場合でもCL圏内に入れる可能性は充分にあると思っていた。
残りのチェルシー戦ハダースフィールド戦カーディフ戦、
全てに勝利し73ポイントでフィニッシュするという絶対条件を達成すれば、だ。
自力では獲得することは不可能だが、不本意ながら4クラブの中で唯一CLを敗退してしまったユナイテッドは他3クラブに対して優位に立っているという見方が出来る。
トッテナムチェルシーアーセナルはCL出場権争いも非常に重要だが、同時に今シーズンのタイトル獲得がかかる欧州カップ戦はそれ以上に負けられない戦いとなるからだ。
ミッドウィーク開催のカップ戦の存在でターンオーバーを強いられることになり、
当然リーグ戦の方に比重を軽くすれば勝ち点を落とす可能性は格段に上がる。
その為にも次のチェルシー戦はシティ戦から中三日での開催となるが、
後がないユナイテッドは必ず勝利しなくてならない一戦となる。
今日のような守備の強度を90分間出すことに加えて、攻撃陣がパフォーマンスを乗せることが出来れば勝利するのは難しくないとだろう。
好調のパフォーマンスの片鱗を見せるサンチェスの起用を願うばかりである。
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