「”繋がない”サッカーの限界」 EPL第35節 エヴァートンvsマンチェスターユナイテッド
こんにちは。まゆりんです。
日本時間日曜日21時30分キックオフのこの試合。
筆者は出先から帰宅してから遅れて参戦したのですが、4-0と無残にも圧倒的敗北。
ただただスコアにインパクトが残りますが、ピッチ上では何が起こっていたのか。自分なりに分析しました。
累積警告で出場停止のショウの代わりに左にダロト。右にはヤングではなく本職CBのリンデロフ。
中盤はフレッジマティッチ・トップ下にポグバ・ウィングにマルシャルラッシュフォード・1トップルカク。
4バックWボランチで守備を固めて、トップのルカクに放り込んで起点を作る、後ろでリスクを冒さないモウリーニョが好む守備的な4-2-3-1という狙いか。
現実的な采配となったが、筆者としては直近のバルセロナ戦で浮き彫りになったビルドアップの問題への改善が取り組まれているのか見てみたいところ。
キックオフ。
立ち上がりからユナイテッドはルカクや右に開いて降りたラッシュフォードに最終ラインからロングボールを預けるというサッカーを展開した。
しかし、ロングボール頼みのサッカーには当然キックの質が問われる。
ユナイテッドの最終ラインがそういった質をコンスタントに出せるはずもなく、
筆者にはボールを捨てているようにしか見えなかった。
最終ラインで余裕を持ててもフレッジとマティッチは効果的なポジションをとらない。
マークの部分に人がいればエヴァ―トンの2トップは内を絞るポジションを取らざるを得ず、サイドには大きくスペースが生まれ、左で高い位置をとるダロトへのコースも作れたはずだ。
使うべきスペースに気付いた右下ポグバが降りてくるも、フレッジにボールは出され、デヘアに戻す形に。
結果的に最終ラインが押し下げられ、デヘアは蹴り出す。
典型的にボールを捨てているシーンの抜粋だ。
ここまでのユナイテッドとエヴァ―トンの差は歴然だった。
ユナイテッドは相手を脅かす攻撃チャンスを一度も作れていないのに対して、
エヴァ―トンはCK3回・クロス3回。ゴールを奪われるのは時間の問題だった。
CK含めた7回目のクロス(スローイン)。落下点の目測を誤ったスモーリングの後ろのカルバートルーウィンに当たったボールはゴール前に流れ、リシャーリソンのバイシクルボレーはゴールを突き刺した。1-0。
後ろから繋げないので降り始めるポグバ。
しかし相手のライン間で受けなければ何の意味もない。
蹴り出せど蹴り出せどセカンドは全く拾えない。
「何やってんだ!俺にくれ!早く!」
見かねたポグバは苛立ちを隠せない様子で最終ラインまでまた降りてくる。
ポグバの縦一本のロングボールはラッシュフォードの足に収まり切らず、やや苦しめのシュートはバーの上。
これが実質ユナイテッドの最初の崩しのシーンだ。しかしやはりロングボールにはただひたすらに受け手も含めて質が問われる。これをやるだけならポグバはCBでいいのだ。
また後ろから組み立てのシーン。
しかしやはりライン間にはポッカリとした穴が開いている。これでは窮屈に決まっている。
またポグバが降りてくるが、ライン間を位置取らないので意味がない。
真ん中にはポッカリとした穴。結局窮屈なサイドに逃がされるだけだ。
ボールカットの流れの中だが、こういったCBが少し前まで持ち上がったシーンでも、SBが効果的なポジションを取らなければボールは前に進められない。
結局後ろのダロトが受け、ルカクにロングボール。
繋げないユナイテッドはCKのチャンスを得るも、フレッジがこぼれ球をゲイエに預け中央にカットインしたシグルズソンへマティッチは寄せず、ミドルシュートはバウンドしそのままゴールに吸い込まれた。2-0。
ボールに触れないラッシュフォードは苛立ちを隠せない。
何故中央に穴を開けるんだ。そういう縛りプレイか?
結局最終ラインに降りたCBポグバのロングボール。 前の選手はボールに触れなければそれはストレスが溜まるに決まってる。どうにかならないものか。
そして後半。ジョーンズフレッジOUT→ヤングマクトミネイIN
スールシャールは中盤の穴を改善することは出来たのか。
最初の後ろから組み立てるシーン
カルバートルーウィンがGKまで詰めてきたところでポグバがCBの位置まで降りてきたので数的有利を作り、
間のマティッチを通して左で浮いたダロトへ繋がる。
しかしこのシーンでは ここまで逆サイドが空いているにも関わらず、スモーリングは前に蹴ってしまった。
リンデロフがマークしたスペースに受けにいけばボールは繋げただろう。
1アンカーとなったマティッチがボールを持ち運び、楔のパスを入れるシーン。
後半は明らかにマティッチが運ぶシーンが増えた。間違いなく指摘されたのだろう。
前向きな材料が見えてきたユナイテッドだが、やはり決定力なものは作り出せない。
ユナイテッドは与えた8回目のCKから、遂に決定打となる3点目を許す。
ただのアンラッキーとも言えるこのスーパーボレー。3-0。
しかしエヴァ―トンは確実に狙いを持ってCK等クロスを多用しているのだ。
マティッチのかなり前への持ち上がり。
しかし呼応する選手がいなく、ボールロストからあわやというシーンに。
こちらもマティッチのポジションによって前進したシーン。
前線と中盤の間にはギャップが出来ていたのでここでマティッチが受けて前を向けると、一気に視界が開ける。
そしてこちらは余りよくないシーンだ。
交代投入のマクトミネイが後ろまで降りて、ラッシュフォードの裏へロングボール。
質頼みのパワープレイを今すべきではない。欲しいのは確実な1点だ。
そして4失点目のシーン。
長いスローインはカルバートルーウィン狙い。
ヤングとスモーリングが挟み込むも内側に流れ、ダロトがクリアミス。
ボールはシグルズソンに収まるが、リンデロフは詰めず並走して遅らせる守備を選択。
この時点でウォルコット(11番)より前にいたスモーリング(12番)だが、
ぶち抜かれ、ダメ押しの4点目。4-0。
スモーリングが遅い訳ではないが試合の疲れもあり、51分に投入されたばかりの快速ウォルコットに追いつくことは出来なかった。 マティッチに至っては流して戻っていない。
その後ペレイラの投入やリンデロフの持ち運びから楔のパスなど前向きな材料もあり、マルシャルの得意のフィニッシュなど前半よりかはチャンスメイクは出来たが、4得点のエヴァ―トンの敷いたブロックを破る術をユナイテッドは見つけられず。
85分にユナイテッドは最初で最後の枠内シュートをマルシャルが撃つが、ピックフォードのセーブ。
そして試合終了。
勝敗を分けたのは”プレー強度に見合わない守備的戦術”と、ビルドアップを妨げる”アンカーのポジション”。
この試合の布陣は紹介した通り、
フレッジマティッチのWアンカーを採用して後ろを固め、ひたすらにルカクや裏抜けのラッシュフォードにロングボールを出しリスクを冒さずに攻撃するというのが狙いだ。
しかし計算外にも立ち上がりからロングボールのこぼれをほとんど回収出来なかった。
これはグディソンパークのエヴァ―トンの強度を褒めるべきか、ユナイテッドの強度を貶すべきか。はたまた別の理由か。
この守備的戦術は失点をしない守備の強度が大前提で、わずかなチャンスをものにするというのが狙いだ。
しかし余りに繋げないユナイテッドはエヴァ―トンにクロスのチャンスを与え続け、2失点。
失点をしないという大前提が崩れ点を獲りにいかなければいけないユナイテッドだが、繋ぐことが出来ず。
”ロングボール”といえば聞こえはいいがユナイテッドがしていたのはボールを前に捨てることだけだった。
では何故そうなったのか。
後ろではリスクを冒さずロングボール。
この戦術は端的に言えば攻撃は前任せ・守備は後ろ任せになるので、前と後ろが分断され、中盤が存在しないといった状態になりがちで
前半のユナイテッドはこの典型的な例を体現していた。
アンカーのフレッジマティッチがかなり後ろ(最終ライン)のポジションを取ったため、中盤に空白が生まれたのだ。
ユナイテッドも余裕があれば繋ぐ気があったはずだ。
だが中央のライン間に立つ選手がいなければ、エヴァ―トンの攻撃陣は内側を絞る必要がなく、サイドへのコースも狭くなる。
エヴァ―トンの2ボランチは、1枚(ゲイェ)がCB間に降りて数的有利を作りもう1枚(シュネデルラン)は相手の2トップのライン間を取る。
ライン間の選手がボールを持って前を向けば危険なパスコースは一気に増えるし、それをさせないために攻撃陣は内を絞るポジションを取るかもしれない。そうなると空くのはサイドに開いたSBへのコースだ。
ユナイテッドはアンカーのポジションで自分たちの首を絞め、窮屈なサイド・回収出来ないロングボールを使うハメに陥っていたのである。
ルカクをターゲットにしたロングボールを放っても、中盤に穴が空いている状態では当然セカンドを回収する確率は低くなる。
これを前半は全く改善出来ず、一方的に攻撃されるという展開。
攻撃され続ける展開になれば当然守備の強度が問われるが、今日の強度では当然持ち堪えなかった。
ポゼッション時はロングボールを蹴り出すような、繋がないサッカーでも勝てるチームはある。
しかしそういう戦術で勝っているチームは必ず守備の規律がしっかりとあり、なおかつ90分ずっと守備に回ったとしても耐えきるだけの強度を保つのだ。
ユナイテッドにそれはない。今日の失点はアンラッキーなものも多かったが、あれだけチャンスを与えたのだから当然の結果とも言えるだろう。
今回は課題であるビルドアップへの改善に着眼したが、ロングボール頼みのサッカーをしていた彼らにとってこの問題は一朝一夕でどうにかなるほど、根の浅いものではないのだろう。
これに関してはもっと長い目で見守るべきなのかもしれない。
最後に今後のCL圏争いについて触れておこう。(黄色がPL)
現在勝点64。
CL圏内を目指すならチェルシーを蹴落として3勝(9ポイント)は欲しいところだ。
(73)
現在勝ち点70。
期待値としてホーム戦は勝つ可能性が高いので6ポイントは積むだろう。(76)
現在勝ち点66。アウェーウルブズ&レスターに敗北すれば勝ち点72フィニッシュ。
現在勝ち点67。直接対決を制すれば、見えてくるか?(70~)
個人的には当然ユナイテッドを応援しているので、
内容問わず73点に到達してほしいところ。
そして日本時間4月25日4時キックオフのマンチェスターダービーのプレビュー。
守備時5-3-2 攻撃時は3-5-2。
バルセロナ戦で短い時間ながら好調のパフォーマンスを見せたサンチェスの起用が見たいという個人的な希望。(ラッシュフォードの可能性が高い)
そしてポグバにはキャプテンを任せてチームの責任を与える。
エヴァ―トン戦で温存したリンガードをここに持ってくる可能性も高い。
その場合はマクトミネイとチェンジして3トップ気味にして前からプレスにいく形だろうか。
またエヴァ―トン戦で見られなかったハードワークを選手には期待したいところだ。
ご拝読ありがとうございました。ご意見ご要望等あればコメントで気軽にお願いいたします。
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